入門講座
アスファルト基礎知識
アスファルト舗装の施工
(1)アスファルト混合物の敷きならし
アスファルト舗装の表層・基層は、アスファルト混合所(入門講座 アスファルト基礎知識 其の7参照)において適切な温度管理および品質管理のもとで製造された加熱アスファルト混合物を用いて層を形成します。
アスファルト混合物の敷きならし方法には、人力施工と機械施工があります。これらの選択は工事規模、工種などによって決められますが、現在ではほとんど機械施工で行われており、アスファルトフィニッシャという専用の機械が使用されています。
図−5は、一般的なアスファルト混合物層を施工している状況です。ダンプトラックで運搬されたアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャに供給し、所定の仕上がり幅、厚さが得られるように敷きならします。敷きならし時のアスファルト混合物の温度は、一般に110℃を下回らないようにし、平たん性を確保するためにアスファルトフィニッシャをできるだけ一定速度で連続運転します。
また、基層のアスファルト混合物の上に表層のアスファルト混合物を施工する場合、層同士の付着を良くするために、タックコートと呼ばれるアスファルト乳剤をプライムコートと同様の手順(図3、4)で散布します。なお、表層にポーラスアスファルト混合物(入門講座 アスファルト基礎知識 其の6参照)を舗設するなど、層間の接着力を特に高める必要がある場合にはゴム入りアスファルト乳剤を用います。
アスファルトフィニッシャ
アスファルトフィニッシャは自走式の機械で、大きく分けてアスファルト混合物を貯めるホッパ、原動機および走行装置を有するトラクタ部、アスファルト混合物を敷きならすスクリードから成っています。
ダンプトラックで運搬されたアスファルト混合物を車両前方にあるホッパに貯め、ホッパ底部にあるバーフィーダで後方のスクリード手前まで送り、スクリューで混合物を左右に広げ、スクリードによって敷きならします。この時、スクリードの角度を変化させてアスファルト混合物の敷きならし厚さを調整します。また、スクリードの幅を左右に伸縮させて敷きならし幅(幅員)を調整することができます。
出典:雑誌「舗装」講座舗装技術者のための建設機械の知識/平成19年4月号 p.40の図3
(2)アスファルト混合物の転圧
敷きならした直後のアスファルト混合物は、まだ”ふかふか”した不安定な状態になっています。そのため、アスファルト混合物の敷きならし後、一般にロードローラやタイヤローラなどの転圧機械により、所定の密度が得られるまで締固め、所定の形状に平坦に仕上げます。締固め作業は、継目転圧、初期転圧、二次転圧および仕上げ転圧の順で行います。
初期転圧は、アスファルト混合物の温度が110~140℃の時に写真6のような鉄の車輪を持った10~12tのロードローラで踏み固めて安定させます。一般に、ロードローラの転圧速度は2~3km/hとし、アスファルトフィニッシャ側に駆動輪を向け、勾配の低い方から等速で転圧します。これは、案内輪よりも駆動輪の方が転圧中に混合物を前方に押す傾向が小さく、その動きを最小にとどめることができるからです。また同様に、混合物の側方移動を出来るだけ少なくするために、横断勾配が付いている場合は勾配の低い方を先に転圧します。
次の二次転圧は、ゴムのタイヤを持った8~20tのタイヤローラを用います。タイヤローラによってニーディング(こね返し)作用を与えて、混合物の粗骨材の配列を安定化し、その間隙に細かなアスファルトモルタル分を充填させ、緻密な表面を形成するとともに、層の均一な締固めができます。また、二次転圧に6~10tの振動ローラを用いる場合もあります。
一般に、タイヤローラの転圧速度は6~10km/h、振動ローラは3~6km/hとし、アスファルトフィニッシャ側に駆動輪を向け、勾配の低い方から等速で転圧します。一般に、二次転圧終了時のアスファルト混合物の温度は、70~90℃です。
仕上げ転圧は、不陸の修正やローラマークを消すために行うものであり、タイヤローラまたはロードローラを用います。
(3)交通開放
転圧終了後、一般的には舗装表面の温度がおおむね50℃以下となってから交通開放します。これは、交通開放直後のわだち掘れなどの舗装の初期変形を抑制するためです。
小柴 朋広・岩岡 宏美 (世紀東急工業㈱ 技術本部技術研究所)
- 【参考文献】
- 阿部、稲垣/漫画で学ぶ舗装工学 基礎編/平成8年8月10日
- 小谷他/図解土木講座 アスファルト混合物の知識(第3版)/平成16年6月30日
- 雑誌「舗装」講座・必携舗装読本/平成16年9、10月号
- 雑誌「舗装」講座舗装技術者のための建設機械の知識/平成19年1、4、5、9月号
- (社)日本道路協会/舗装施工便覧(平成18年版)/平成18年2月24日
- (社)日本道路協会/舗装設計施工指針(平成18年版)/平成18年2月24日
- 高野漠/舗装機械の使い方 第二版/平成7年8月30日
- 8-1路盤の施工
- 8-2アスファルト乳剤の散布
- 8-3表基層の施工